
【review・13】

SEVEN
(光と影)
(98.5.16)
古くて申し訳ないですが、本日CXのゴールデン洋画劇場で再見し、やはり良かったので書きたくなりました。
「良かった」というか・・・とにかく気持ちにグッと来る。
なんなのだろう。この「グッと来る」感じ・・・。
デビッド・フィンチャー監督の今のところの最高傑作でしょう。
見終わったあとの「しばらく黙ってしまう」感覚や「人間の暗闇に対しての感覚」は
「セブン」にも出てくる「ダンテの神曲」をモチーフにしたとも言われる永井豪の最高傑作「デビルマン」やこれまたSFと「人間の心の問題」を上手くMIXさせた傑作コミック「寄生獣」の読後感に近い。
「人間の良心と悪意」「善と悪」「光と影」。
公開当時に書き綴った僕の感想文が残っていたので以下に記します。
この映画は単なる猟奇殺人を恐がって楽しむA 級サスペンスでもなければホラー
でも無いと思う。勿論、日本はアメリカほど荒廃していないし安全な国だ。でも
いつか、あの黒人刑事とブラッド・ピットの住む街のように日本がならないとは
言えない。
確かに犯人は常軌を逸していたし、正常な精神では無かったと思う。でもそれは
あの街に住むみんなの心の中に少なからず巣くっていたものだ。
「この街はひどすぎる。だから俺は子供を生ませなかったんだ」黒人刑事は言った。
「この街が嫌いなの」ブラッドの奥さんは言った。
「楽しいわけないだろ。それが人生だ」娼婦館の店長は言った。
誰もが感じていた。いらいらしていた。なんて街なんだ。どうしてこんな生活なんだ。
街全体が神経症になっていたのだ。
街全体の感情を犯人は代弁した。勿論そうと分からずに。そして市民は思う。
「あいつは精神異状の殺人者だ」と。
でも犯人はある意味で市民の代表だ。ただ違ったのは「無関心」でいられなかっただけ。
黒人刑事は「無関心」が唯一この街で生きていく方法だと思っていた。
嫌だと思うもの、汚いと思うものをただ排除する、もしくは浄化しなけらばならない
と犯人は思った。彼は恐ろしく純粋だった。彼は自分の感情に正直だった。
ただ彼は殺人という方法しか知らなかった。憎むことしか知らなかった。
犯人は裁判をきちんと受けたかもしれない。終身刑になったかもしれない。でも街は相変わら
ずだ。何も変わらない。何も解決していない。新しい犯人が出てくるだけだ。
「またもや精神異状の犯行か?」マスコミはうわべだけのセンセーショナルを
煽りたてる。問題は全体のものだ。全員のものだ。
「これは、まだ続くぞ」黒人刑事は分かっていた。証拠が無いうちにこの事件が
続くことを。彼は事件が全体の問題だと直感で分かっていた。
俺はオウム事件を思い出した。あれは「セブン」じゃないか。彼らのほとんどは
恐ろしいほど純真じゃなかったか?彼等は自分達を「光」だと思い込んだ。「光」が強烈なほど「影」はくっきりしてくる。そして彼等は「自分達以外」を「影」だと思った。更に「影を排除しよう」と思った。しかし「光」があるから「影」が存在するのだ。彼らの行いは間違っていた。でもそれを「単なる精神異状集団の行動」
とかたずけるのはブラッド君だ。でも俺も含めてほとんどみんなブラッド君だ。カルト集団を「単なる社会悪」と決めつけるのは、カルト集団が「世の中間違っている」と思い込むのと同じ構造を持っている。お互いが自分達を「光」だと思い、相手を「影」だと思い込んでいる。
「セブン」と「オウム」に共通して出てくるのは神だ。今の社会の価値観を否定
して排除しようとする神だ。
神なんているのだろうか。神様ってなんなのか。わかりません。ただ神様なら「憎い相手を許すことが出来る強さ」を持っているのじゃないか?自分と相手の違いを認めることの強さ。七つの大罪を許すことの出来る強さ。神なら「罪」を「人間の成長の一過程」と見ることが出来るのではないか。
「光」と「影」は本来一つのものなのかもしれない。
ラストのどんでん返しはすぐ分かった。だってあれしかないもんね。
ここでみんなブラッド君の立場になったらどうするのか?俺はわからない。
ブラッド君は憎しみに勝てなかった。憎しみに勝つのは本当に苦しいのだ。
無理に憎しみを押さえつければ爆発する。憎しみに勝つ必要があるのか?同じように憎しみに勝てなかった犯人は「殺人による浄化」に走ったのだ。
「犯人の勝ちだぞ!」黒人刑事は叫んだ。そして犯人は勝った。
「愛は努力のいるものだ」黒人刑事はブラッド君にそう言った。
「セブン」は俺にとって「苦しみも伴うかもしれない大きな愛」を突きつけてくる映画だ。
こんな感じで当時は感想を書いていました。ちょっと力んでいて今読むと恥ずかしい気持ちもありますが、今思うのは「過ちは罰するものではなく訂正するもの」ということです。なんちてね。おそまつ。
「SEVEN」
監督:デビット・フィンチャー
出演:ブラッド・ピット他。
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