
「探偵物語を観て」(my best television!!)
今日、友人から借りていた松田優作主演「探偵物語」の18話から最終回までを見終わった。本来なら「DAI'S MOVIE」のコーナーに感想を述べるべきものかもしれないが、この作品については僕の個人的感情ととてもリンクしていて、客観性が保てない。作品としての質が日本テレビドラマ史上、圧倒的に素晴らしいことには違いないのだが、
この作品はとにかく洒落ていて楽しい。「SMAP×SMAP」におけるキムタクのパロディが良く出来ていて、僕の周りの人間にも評判が高いが、そもそも「探偵物語」自体がパロディの作品ともいえる。今見ても考えられないような良い意味での「いい加減な」ギャグや「一見して軽いノリ」は、何故97年の現在でも面白いのか?これが僕がこの番組を高校生のときに初見した単なるノスタルジーではないと思っている。今や原宿のカリスマと奉りあげられているデザイナーのJONIO氏が「探偵物語」のTシャツを創り「本当に好きな人だけが買ってください」と言うくらいでもある。言葉で言うと浅く感じられてとても嫌なのだが、この「軽さの」面白さは、
やっぱり言葉で書くとくさいなあ。とても陳腐だ。でも松田優作にとってはとてもリアリティがあることだったのだと思う。はっきりいってストーリーや映画的表現にはとても古くさくて見てられないものが多い。これは当時の脚本家と監督さんの力量だろう。自分も映像の仕事をしていて、他人の力量を言える作品を創っていないので自分も恥ずかしいのだが。ストーリーよりなにより「探偵物語」は松田優作のとその他の俳優が創った「あの街」自体が魅力的なのだ。彼等にはストーリーで放送される以外での生活がちゃんと映像の裏に匂ってきて「工藤俊作」「服部・松本刑事」「かおり&ナンシー」「いれずみ者」「骨董屋」などなど。彼等の明るく生活している裏には厳しい現実と孤独感がある。それぞれの登場人物は貧しく明日の夢も持てない。女優の卵である「かおり&ナンシー」さえ恐らくオーディションには落ち続けているのだろう。それは一流の俳優生活をしていない現実の彼等、そして決して満足のいく作品創りに参加していない松田優作自身の葛藤と孤独、同じ志しを持った仲間への渇望と失望がそのままあらわれていたのではないだろうか?
画面の色調も一気にアンダーになり、工藤ちゃんはいつもの赤いシャツとサングラスはしないで、まるで喪服のような黒ずくめ。ある事件が発端となり、工藤ちゃんの「愛すべき相棒達」が次々と殺されていく。探偵事務所に帰った工藤ちゃんは、血塗れの「いれずみ者」を見つける。普段から「バカ呼ばわり」しながら世話をしていた工藤ちゃんの「愛すべき」舎弟だ。それを見つめる工藤ちゃんの顔は26話までの「軽さ」など無かったかのように静かだ。「いれずみ者」の死体が転がる部屋を出て、となりのオフィスに入ってくる工藤ちゃん。「哀しみ」というよりも何か「悪寒」に襲われているかのように青ざめた顔。そこで工藤ちゃんは嘔吐する。
落ち着こうとして煙草に火を付けようとするが、いつもの猛烈ガスライターはガス欠で、煙草が吸えない。茫然自失の工藤ちゃんは夢遊病者のように部屋の片隅にある椅子に座り込む。ゆっくりとカメラは工藤ちゃんの顔に寄っていく。工藤ちゃんはその時、松田優作の顔になり(僕はそうだと感じた)、強くてかっこよくてユーモアのある探偵はそこにはもういない。そして吐き出すようつぶやきはじめる・・・。
このワンカットに僕は釘付けになり、微かに流れる工藤ちゃんの涙を見ながら、自分も涙が出ていることに気付いた。これは工藤ちゃんの台詞ではなく松田優作個人の台詞であり、勿論殺されたのでは恐らく無く、今まで付き合ってきた人間達に対する愛情と失望がどんなにかつらく、そして強くストイックに俳優業に専念するしか自分の道がなく、
そしてそれは僕の現在の心境とリンクし、他人とは思えない感情を起こさせたのである。ここでは細かい僕の体験はあまり書くつもりはあまりないのだが、常に他人との波長が合わずに生きてきた自分の姿を思い返してしまう。過剰な夢を仲間達と共有しようとした。最初は仲間と共に盛り上がって進んできたことが、結局は自分の考えている夢とは違うビジョンを見ていたことに気付き、あきらめたこと。そしてまた最愛と感じた彼女からの別れの言葉。様々な「他人との違い」と「共感を得られないこと」からの「人間不信」。「他人への期待」が深かった優作氏は、それが深いだけに「失望」も深い。それならばもう一切の期待をしない、つまり「仲間はつくらない」と思った工藤ちゃんの台詞は恐らく優作氏の気持ちだったのじゃないかなと思う。僕が今、容易に仲間を創りたくないと思う中にも、そんな気持ちがある。優作氏は「架空」ではあるが「探偵物語」という世界の中で「仲間」を作りそして「殺した」のである。
優作氏は「ア・ホーマンス(優作氏唯一の監督作品)」の頃から、座禅をしたりインド仏教に関心を持ったりしていたと聞く。単純に宗教に逃げても解決はない(僕もニューエイジにつかったこともありますが)とも思うが。優作氏に解決はあったんだろうか。天国の優作さんに聞いてみたい。どうだったんですか、優作さん?
【今夜のBGM】「探偵物語 MUSIC FILE」SOUND TRACK
what's DAI?の目次に戻る?
MENUに戻る?
mailはこのコウモリが運んでくれます!